TALK SESSION 座談会
土岐の山奥・オールドの世界に飛び込んで。
E.O
鉱山学部卒
2000年入社(新卒)
開発・配合担当
H.S
高校普通科卒
2014年入社(新卒)
検査担当
H.D
工学部卒
2019年入社(中途)
検査担当
今回は私たちの仕事の魅力を伝える会ですから、語り尽くしましょう。
まずこの3人の役割分担だね。私がタイルの規格(焼き上がりの色・寸法・強度)を実現する配合、つまりレシピみたいなものを考える。で、HちゃんとDがお客様先の量産設備でも同じ規格になる用にそのレシピを微調整する。仕上がりに問題がないかを検査する。
Oさんが配合を考えるのは、たとえばタイルに使っていた原材料のうち一つの粘土の在庫が数ヶ月先に無くなりそう。それまでに代わりの粘土を選んで同じ規格におさまるように配合し直す、というケースですね。
うん。そうだね。まず仮説を立ててみる。その通りに作って出来上がった試作品に対して、強度が足りない・焼けすぎといった課題が見えてくるから、配合やレシピ内容を再考してその課題を一つひとつ解消していくよ。
Oさんぐらい経験があると、代替案もすぐ思いつけたりするのでしょうか?
「アレを代わりに使えばいけるな」とは思いつけるようになったけどね。でもそこからが長いからさ。ゴールが100だとしたら、80まではすぐ行くけど、80から100にするのが難しいって感じかな?
それはやっぱり、天然の原材料を扱っているから?
だと思うよ。数年前の原料にはこの粘土を使っていたのに、今年は同じ粘土を使ってもうまくいかないなんてことが当たり前の世界だから。
ズバリこの仕事の魅力は?
鉱山から持ってきた自然そのまんまの原材料と向き合って、色も寸法も強度も均一なタイルに仕上げる方法を考えること!規格にピッタリはまるとわかった時、これがやっぱり醍醐味よね! そのためには……。
原材料の特性や素性を頭に入れるのはまず大事ですよね。
かと思えば焼いてみなきゃ仕上がりが読めない原料もあるし。
「Aという条件・環境でBしたから必ずCになる」っていうのがファインセラミックスの確実さだとしたら、その正反対のところにあるのが私たちの仕事。同じ原材料でも月日が経てばその品質に違いが出てしまうのが当たり前で、数値では正確でも焼き上げたら色がズレた、強度が足りない、なんてのはあるある。そこのコントロールが1番難しいところだし、逆にものづくりとしては面白い部分だよね。
この間、試作品のタイルの収縮率が1回目にちょっとオーバーしちゃったんです。でも焼成温度や時間、粉砕の回転数を少しずつコントロールした結果、2回目に規格内にピタッとはまって。気持ちよかったなあ。
僕は最近苦戦してました……。原料の数値は問題ないのに、仕上がりのタイルの強度が一向に改善しなくて。加水量がおかしかったのかな?とか、思いつく策はやってみたんですが。
そういう時は自分の感覚に集中すると良いよ。やっぱり天然原材料を使ったものづくりって、いつ何をきっかけにどう質が変わるのか予測しきれない部分があるから。
自分の感覚って、土の手触りとかですか?
そうそう! 数値や「この原料はこうであるはず」っていう前提に縛られすぎると逆に動きにくくなる時があるんだよね。「いつもよりパサパサしてるな」とか、自分が察知した違和感にヒントがあるはずだよ。最後はやっぱり自分の感覚なのよ。
なるほど。まだ解決していないのでもう一回最初から見てみます。
頑張れ!
僕は最近開発の方にも携わらせてもらっているんですが、Oさんが大切にしていることってありますか?
開発に限らずだけど、自分の知識に満足しないことだね。モノに対する仕組みはどんな分野でも知りたくなっちゃうんだよねえ。たとえば「強化ガラスに替わるタイルの開発」では、ガラスの評価方法とか分析方法も習得する必要があってね。脳内は大忙しなんだけど(笑)、楽しさとか好奇心が上回るの。そこから新しい道が拓けたりして、自分の中で実を結んだ瞬間にすごく達成感があるな。
そうですよね。知れるのは楽しいですよね。僕はつい目の前の忙しさに気を持っていかれがちなので、「時間はかかったけど、この事に気づけて嬉しい」とか、「次に生かそう」とか、そういう自分の気持ちはちゃんと大切にしていきたいって思いました。
Hちゃんは最初製造部として入社してきたよね。
そうです。ヤマセを選んだのも、重機やトラックに乗れる仕事がしたかったから。
トラックとショベルカーを乗りこなしてたもんねえ。産休育休から復帰したのをきっかけに技術部に異動したじゃない? 専門的に学んだ訳じゃないのに、検査業務を3ヶ月で独り立ちしちゃうんだもん。私、びっくりしたよ。
普通は3年はかかるって言われますもんね。
製造部にいた6年間、原材料の水分量は毎日見ていましたし、色の違いも何となく覚えますからね。そのおかげかも。私は全くの未経験ですけど、2人とも大学でセラミックスを学んでいたんですよね。
そうですね。
セラミックスならファインの道もあったのにどうしてヤマセに?
私の時は就職氷河期で、長く就活していたんだけどセラミックス関係はどうしても諦めきれなくて。たまたま教授にここを紹介してもらえたんだ。でも当時の社長(現会長)に何度も念を押されたんだよ。「ウチはものすごいオールドだけど良いのか?」って。
それまでの私は、原材料といえば徹底的に精製されたものという認識だったんだ。
でもヤマセで扱う原材料は、鉱山からそのまま持ってきた粘土や土ですもんね。
そう。え、このまんまの土使うの? って最初は信じられなかった(笑)。だって昨日と今日で成分数値が変わるなんて、ファインじゃあり得ないことだから。それに評価や分析の手法もまるっきり違うし……。
一番驚いたのって何でしたか?
粉砕した後、検査で泥をふるいにかけるじゃない? そこで残った残渣、つまり溶けずに残った粘土の量でタイルの寸法を管理するっていうやり方だね。ふるい落ちた方じゃなくてすれ残った方で管理するってどういうこと?って。それに、粒度分布計を使わずに手でふるいにかけるじゃない。
それも珍しいんですか?
うんうん! ファインでは絶対使ってたから。 「粒度分布計の粒は丸いことが前提だけど、粘土の粒は丸だけじゃない。機械で振動させると微調整ができなくてふるいすぎる場合があるから、微妙な力加減ができる人間の手が一番正確なんだ」って上司に教えてもらってさ。大学4年間で身につけた価値観がひっくり返ったよ(笑)。ものすごいカルチャーショックだったなあ。
ファイン畑にいたのなら尚更、その感覚に慣れるには苦労しそうですね。
うん、ちょっと時間かかっちゃった。でも昔からあるこの焼き物の世界で先人たちが切り拓いてきたやり方にはちゃんと意味があるんだって、実践するうちに理解できたから。その価値観大逆転も今では良い思い出です。
多少忙しさに波はありますけど、手伝ってくれたり気にかけてくれたりする人がいるので、1人で悩むことはあんまり無いです。
技術部のみんなはすぐ気づくよね! あの子調子悪そうだな、行き詰まってるな、とか。
はい。朝の挨拶のトーンで何となくわかります(笑)。
じゃあ僕も読み取られてるんでしょうか……。
Dは自分からはSOSを言わないけど、すぐわかる! 検査が進みませんってオーラが出てるから周囲からどんどんフォローが飛んでくる(笑)。
頼まれたからには自分でやり切らないと、と思っちゃうんですよね。
真面目なのが良いところだけどね。でももっと周囲に頼って良いんだよ。私だって周りの先輩に助けられてばっかりだし。
そうそう。どんと来い! でもDがまとめたデータはいつもほんとキッチリしてるよね。データの取り方も正確だし、ブレない。傾向もわかりやすい。私はまとめるのが苦手だからすごい助かってるよ。
私も、Dの後を辿ってけば間違いないと思ってる。
そう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます。
ヤマセの検査は2人のおかげで成り立ってるもんね。
得意不得意を補い合ってやってこう。
うんうん、良いチームワークじゃない! これからも頼りにしてるよ。
人数が少ないからかもしれませんけど、うちの会社って年齢差はあっても壁はあまり無いですよね。
そういえば上司のことも~部長って呼ばないなあ。
たしかに。下の名前で〜さんって呼びますね。
そう。だからさ、お客様から電話で「〇〇部長をお願いします」って言われても「あれ、部長誰だっけ?」ってなっちゃうんだよね。
それめちゃくちゃわかります!(笑)。あと、みんなあだ名つけられがち。製造の人間にあだ名をつける人がいますからね。きっと新しい人も気づいたらあだ名で呼ばれるはず。
私含め、巻き込んでそのうち慣れてもらおうって魂胆なのよ。Dもお陰ですぐ馴染めたでしょ?
はい。本当に声かけてもらって有難いです。
みんな気にかけてるんだよ。
最近はどうなの? 家に帰って何してるの?
ご飯はちゃんと作ってる?
自炊はしないです。
してないの!? 一人暮らし始めた最初は総菜ばっかり買ってるって聞いたけど、まだそんな感じなの?
そろそろなんか手の込んだのを作ろうって気には…。
……。
まあでもちゃんと食べてるんなら良いよね……。
ほら、こうやってまたお節介しちゃうんだよ私たち!